ヤミーリセット
原案 ”レッドオアブラック”(野島伸幸)
700円(税込756円)
【現象】
四枚のキングと四枚のエースをあらためます。四枚のキングを裏向きにしてケースの下に置き、四枚のエースは手に持ちます。キングのパケットの上でエースのカードを振ると一枚ずつキングに変化していきます。四枚すべてがキングに変化したところで魔法を解くと、すべて元通りのエースに戻っています。ケースの下のキングも確認しますが何も怪しいところはありません。
”リセット”は1977年に『Super Magic』で発表され、ポール・ハリス(Paul Harris)の名を一躍有名にした作品です。
作品としては未完成な印象だったものの、その魅力的なプロットは世界中のマジシャンたちの脳を刺激し、アール・ネルソン(Earl Nelson)が1978年に『Variations』で発表した”リセット・リセット”など、今も多くのバリエーションが発表され続けています。
作品名”ヤミーリセット”のヤミーは、やはり「Yummy(美味しい)」でしょうかね?美味しいリセット。実際ジョグやブレークなどの基本技法だけで演技可能な手順となっており、多くのリセット作品群の中では、かなり難易度低めに設定されていると思います。レギュラー八枚のみで比較的簡単にリセットの強烈な現象が起こせるのであれば、たしかに美味しい話です。しかし、ひょっとしたら「病み」とか「闇」の意味だったりするかもしれません(笑)
【長所】
難易度低め:カードの操作そのものに難しいところは殆どなく、ほぼ基本技法のみで手順が構成されています。
エース・パケットをフェアに示せる:特筆すべきはエルムズレイ・カウントを使用せず、四枚のエースを広げてフェアに示せるという点です。リセットを好まない人にその理由としてよく挙げられる要素のひとつが見事に解決されています。
エンドクリーン:これは使うのがレギュラーカード八枚のみだからというだけではありません。リセットに必ずつきまとう問題として最後のパケットをどのように示すか?というものがありますが、これを目から鱗の方法で解決しています。しかも、この作品だけでなく他のシチュエーションにも応用できる簡単で便利なハンドリングですので、このアイデアを得られるだけでも購入する価値は充分あると思います。
【短所】
三枚目の変化直前に辻褄の合わないことが起こる:これは敢えて何か挙げるならばという前提での話なのですが…この時に冷静に考えると辻褄の合わないことがカードに起こります。とはいえ実際に私が実演映像を観ていて特に何も感じることなくスルーしていたわけですので、スムーズに演じさえすれば大した問題で無いことは明らかです。
パケットの厚み:この作品の売りのひとつはエース・パケットを四枚フェアに示せるところですが、その代償としてパケットの厚みの差異がその他のリセット作品よりも大きめで、その点を気にする人はいると思います。ですが、ケースを使って差異を目立たなくすることで充分クリアできていると思います。
【オマケ】
インタビューの最後のあたりで語られているリセットの演出アイデアがとても面白いです。聞いた時は、むしろこっちの方で演じてみたいと思いました。実際演じてみましたが、演技が終わった後の独特のモヤっと感がクセになりますので、是非試してみることをオススメします♪