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トランプの不思議 復刻版 -現代カード奇術入門-

高木重朗

著者 高木重朗

編注 松田道弘

初版 2011/12/06

定価 2500円(176ページ)

1956年に力書房より出版された日本の近代マジック草創期を代表するカードマジック入門書です。高木重朗氏の死(1991年)後、絶版となっていましたが五十年以上のブランクを埋めるため松田道弘氏が補注・注釈を付け加え待望の復刻となりました。


Ⅰ序編 1章 カード(トランプ)奇術について

 スートの起源について興味深い記述があります。「ダイヤは貨幣の変形で商業を表わし、ハートは洋盃の変形で僧侶を意味し、クラブは棍棒の変形で農業を表象し、スペードは剣の変形で王侯を表現しているものと言われています。」

2章 使用するカードについて

3章 カード奇術の術語

4章 本書の解説の仕方

 効果・準備・方法・注意の四つに分けて解説する形式はそのわかりやすさから現在の多くの解説書でもスタンダードなものとなっています。

Ⅱ 基礎編 1章 カットとシャフル

1.カット

2.カットを用いる奇術 指先の不思議

 最も基本的なカード当てですが、この本に書かれている選んだカードを戻してカットしてもらう時の工夫は意外と知らない人も多く勉強になります。

3.シャフル

a.ヒンズー・シャフル(Hindu Shuffle)

b.オーバーハンド・シャフル(Overhand Shuffle)

c.リフル・シャフル(Riffle Shuffle)

2章 嘘のカット(False Cut) と嘘のシャフル(False Shuffle)

1.嘘のカット

アメリカのジョージ・キャプラン(Jeorge Kapran)が1948年に発表した方法を改良したもの。

2.嘘のシャフル

a.ヒンズー・シャフルを用いる嘘のシャフル

b.リフル・シャフルを用いる嘘のシャフル

3.嘘のカットと嘘のシャフルを用いる奇術

スコークのシックなトリック

 デックから適当に十枚ほど抜いてもらい、その中から一枚だけ心の中で覚えてもらいシャッフルしてからデックに戻しカットするがマジシャンはカードを当ててしまいます。難易度低めで単純な原理を用いていますが、策略が非常に優れているカード当てでとても不思議に見えます。

探偵するカード

 観客が自分で操作して左右のポケットに入れたカードをマジシャンが自分の探偵カードに聞いて二枚とも当ててしまいます。解説を読むと当たり前すぎて本当に通用するのかと疑いたくなりますが、演者の方が驚くほどの効果があります。

ささやくクイン

 何枚もの裏向きのカードが何であるかをクイーンがマジシャンに囁いて教えてくれます。現象自体は透視術ですが、演出次第で作品がとても面白くなるという一例です。

3章 コントロール

1.トリプル・カット(Triple Cut)三重カット

2.コントロールを用いる奇術

飛び出すカード

 観客にカードを一枚選んでもらいデックに戻して混ぜ、デックをハットに入れて観客に持ってもらいます。マジシャンが帽子の底を指ではじくと観客の選んだカードだけがピョンと空中に飛び出します。

ライジング カード

 観客の選んだカードがハンカチで手に縛ったケースから抜け出てきます。仕掛けを必要としない即席バージョン。

3.ダブル・カット(Double Cut)

4章 強制法

1.リフル・フォース(Riffle Force)

ヒューガードとキャプランの方法。

2.強制法を用いる奇術

灰は語る

 観客に一枚のカードを選んでもらい、そのカードのスートと数を紙に書いて見えないように折りたたんでもらってから灰皿の上で燃やしてもらいます。マジシャンがその灰を腕に擦り付けると観客のカードのスートと数が浮かび上がります。即席カードマジックの傑作のひとつです。

思考の磁気転移

 観客が選んだカードを磁気を起こしたマッチ棒で当てます。

盲目の奇術師

 観客が選んだカードをマジシャンが目隠しをしたままで当てます。ここで書かれている目隠しをしたままでおこなう演技の大事なコツは初心者にとって勉強になると思います。

5章 ダブルリフト(Double Lift)二重上げ

1.ダブルリフト

2.ダブルリフトを用いる奇術

エースの行方

 五枚のカードでおこなうモンテ風の作品。観客はエースのカードを当てることができません。

エレベーター カード

 エドワード・マルロー(Edward Marlo)考案(作品名はペネトレーション。ダイ・バーノン(Dai Vernon)の"A-2-3"からヒントを得た。エレベーターカードと名付け有名にしたのは改案者のビル・サイモン(Bill Simon))で古典カードマジックの傑作のひとつ。A・2・3のカードを抜き出して3の上にデックを置いて指ではじくと3のカードがデックの一番上に上がってきて、2のカードをデックの上に置くと今度はデックの一番下に移動し、最後はAをデックの中に差し込むと一番上に上がってきます。

6章 グライド

1.グライド

2.グライドを用いる奇術

手の下で変わるカード

 観客に一枚のカードを選んでもらいデックの中に戻したあと、関係ないカードを裏向きに置き手でおさえてもらいます。選んだカードが何だったか言ってもらい、おさえているカードを表返すと関係なかったカードが選んだカードに変化しています。

4枚のエース

 A四枚の山とそれ以外のカード四枚ずつで作った山を三つ作り、その中から観客が自由に選んだ山とAの山が一瞬で入れ替わります。

3.グライドを利用した強制法

7章 パーム (Palm)

1.パームについて

a.パームの姿勢

b.パームのカバーの仕方

2.パームの仕方

3.パームしたカードを1組のトップに置く方法

4.パームを用いる奇術

最後の1枚

 観客に一枚のカードを選んでもらいデックに戻したあと、十枚のカードを抜きだしマジシャンのポケットに入れます。マジシャンと観客が交互にポケットの中からカードを一枚ずつ取り出していき、最後に残った一枚を観客の取り出させるとそれが観客が選んだカードです。

Ⅲ かあど まじっく あらかると

カードの輪

 十三枚のカードを裏向きで円形に並べ観客の好きなカードの上にコインを置いてもらいます。ここからマジシャンは後ろを向き観客の方を一切見ませんが、観客がコインを時計回りに移動させた数を当ててみせます。古い数理原理を応用して趣の違った作品に仕上げられています。

4枚の〝2”

 デックを観客が混ぜて半分くらいをマジシャンに渡してもらいます。互いにカードを背後に廻して二枚のカードを抜き出して交換し、後ろ手で自分の山に表向きに差し込みます。カードをテーブルの上に出して広げると四枚の2が表向きになっています。

カードと封筒

 ポール・ルポール(Paul LePaul)考案。観客に一枚のカードを選んでもらいデックに戻したあと、もう一枚違うカードを別の観客に覚えてもらい、それを封筒に入れて封をします。デックを半分に分けてもらい、その間に封筒を挟んで何度かひっくり返します。すると封筒に入れたはずのカードが封筒の下にある下半分の一番上に表向きで現れます。そして封筒の中を確認すると最初に観客が選んだカードが入れ替わりに入っているのです。

類は友を呼ぶ

 マーティン・ガードナー(Martin Gardner)考案。観客に一枚のカードを自由に選んでもらったあと、残りのデックを適当に三つの山に分け、選んだカードの数字と同じ枚数だけ操作させると、それぞれの山のトップから観客が選んだカードと同じ数字の三枚のカードが現れます。

不思議な入れ換え

 高木重朗考案。デックのトップカードを表返すとハートのAです。裏返してマジシャンの右ポケットに入れます。再びデックのトップカードを表返すとスペードのAです。裏返して今度はテーブルに置き観客に手でおさえていてもらいます。マジシャンがポケットからカードを出して見せるといつの間にかスペードのAになっており、観客の手の下のカードはハートのAに入れ替わっています。

無意識的読心術

 ハリー・ローレイン(Harry Lorayne)考案。二組のデックを用意し、観客とマジシャンが持ちます。マジシャンはカードの表を見ながら一枚選びデックのトップに置きます。観客は表を見ずに一枚選びデックのトップに置きます。互いのデックを交換してからトップカードを表返すと同じカードなのです。

スリー カード モンテ

 古くから演じられている有名な手順。シンプルなすり替え部分のみで角を折り曲げるクライマックス手順までは解説されていない。

4枚のエース

 エドワード・マルロー(Edward Marlo)考案手順のひとつ。四枚のAをテーブルの上に裏向きに並べ、その上に他のカードを三枚ずつ重ねて四つの山を作ります。観客に好きな山を選ばせて、その山をひっくり返すといつの間にかAが四枚集まっています。マジシャンズ・チョイスについても解説されています。

ホーミング カード

 フランシス・カーライル(Francis Carlyle)考案。観客にカードを一枚選んで表にサインしてもらいます。マジシャンはズボンの右ポケットの内側を引き出して空っぽであることを示し、カードをデックの中に戻してもらいますが、いつの間にかサインカードはズボンの右ポケットに入っています。もう一度デックの中に入れますが再びズボンのポケットから現れます。

三重の一致

 ジョン・スカーニ(John Scarne)考案(1945年)。裏模様の異なる二組のデックを用意し、観客とマジシャンがそれぞれをよく混ぜます。互いのデックから表を見ずに一枚抜き出し、相手のデックのトップに置いてカットする操作を三回繰り返します。デックを広げてその三枚を確認するとすべて一致しています。

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