奇術種あかし
著者 柴田直光
初版 1951/12/20
定価 1200円(180ページ)
まだ日本語での本格的な奇術解説書があまりなかった昭和中期において多くの奇術愛好家がバイブルとして愛読した本です。作品数はカード37、ロープ21、ボール7、コイン9、ダイス3、数理9、食卓奇術22、当てもの3の合計111作品を収録しており、これほどの情報量をわずか180ページにまとめているのは本当に驚きです。手順や演出は当然ながら当時の時代を反映しており、現代と比べるとスローテンポに感じますし、今ではほとんど演じられなくなった作品もいくつかありますが、だからこそ逆に新しいヒントを得られるかもしれません。私にとっては温故知新を実感できる本です。
第1編 カードの奇術
【Ⅰ】準備
(1)奇術用カードの選定
(2)カードの手入れ
(3)カード取扱上の術語
【Ⅱ】カードの切り方とカードコントロール
(4)上手切り
(5)インジョッグとアウトジョッグ
(6)アンダーカット
(7)カードのコントロール
(8)上手切りを応用したカード奇術
[1] ポケットから聴きとる
観客にカードを一枚選んで覚えてもらい、デックに戻しよく混ぜたあと観客のポケットに入れます。観客に一から十まで好きな数字を言ってもらい、その枚数だけポケットからカードを取り出すと最後に観客が選んだカードが現れます。
[2] 5枚のカード
観客にデックを渡し、絵札以外ですべて数字の違う五枚のカードを選んでもらいます。五枚のカードの中から好きな一枚を心の中で覚えてもらい、カードを一枚ずつデックの中に混ぜ込んでいき、すべてデックに混ざったところで観客が覚えたカードを聞き、その数字と同じ枚数だけトップから配ると観客が覚えたカードが現れます。
[3] カードのスペル
マジシャンはデックから六枚のカードを抜き出し、観客に好きなカードを一枚覚えてデックに戻してもらいます。観客に覚えたカードを聞き、そのスペルを綴りながらデックのトップからカードを配っていくと最後に観客が覚えたカードが現れます。
【Ⅲ】嘘の切り方
(9)カードの割れ目
(10)パックの上部を乱さない切り方
(11)パックの下部を乱さない切り方
(12)客のカードをトップへ持って来る
(13)全体の順序を乱さない切り方
(14)嘘の切り方を応用したカード奇術
[4] 指先の眼
観客に五枚のカードの中から一枚覚えてもらい、それをマジシャンがポケットに入れてスートを聞き、指先で当てます。
[5] 声音で判読
デックを配り分けて六つの山を作り、マジシャンが後ろを向いている間に観客は好きな山の中から一枚のカードを選び、覚えたらカードを戻してすべての山を好きなように重ねて一組のデックに戻してもらいます。観客に一枚ずつカードを読み上げてもらい、マジシャンは観客の声だけで選んだカードを当ててしまいます。
[6] エースの散策
観客が配り分けた四つの山のトップにAが現れます。
[7] 予言カード
観客が13のルールでデックを配り分け、選ばれた一枚のカードが予言されています。
【Ⅳ】切り返し
(15)切り返し
(16)嘘の切り返し
ⅰ2つ切り
ⅱ3つ切り
ⅲ4つ切り
(17)嘘の切り返しを応用したカード奇術
[8] 教育のあるカード
観客に一枚のカードを選んで覚えてもらい、デックに戻してよく混ぜます。デックのトップから一枚ずつ表向きに配っていき観客に好きなところでストップをかけてもらいます。カードが順番に並んでいないにも関わらずストップがかかったカードの数字と同じ枚数をさらに配ると、そこに観客が選んだカードが現れます。
[9] 黙示法
有名な「怠け者のカード当て」です。観客に一枚のカードを選んで覚えてもらい、デックに戻してよく混ぜますが、マジシャンは観客の選んだカードがデックの何枚目にあるかをぴたりと当ててしまいます。
[10] 何度も配る
前述の黙示法と同じ原理で今度は観客自身に当てさせてしまうバージョンです。
【Ⅴ】裏引き
(18)裏引き
(19)裏引きを応用した嘘の数え方
(20)グライドを用いたカード奇術
[11] 増えていくカード
七枚のカードを数えてみせ、三枚をテーブルに置いて再び数えてみると七枚に増えています。三枚をテーブルに置きますが、再び数えてみるとまた七枚とどんどんカードが増えていきます。
[12] 客の手の中で変わるカード
観客に一枚のカードを選んで覚えてからデックに戻してもらい、よく混ぜます。観客に手を出してもらい、その上に選んだカードではないことを一枚ずつ確認しながら四枚のカードをのせます。手の上のカードを三枚目まで表返してあらためて選んだカードでないことを確認してから観客に選んだカードがなんであったか聞きます。最後のカードを表返すと違うカードだったはずなのに観客が選んだカードに変化しています。
[13] 探偵カード
現在演じられている同じような名称の作品とはちょっと違った趣のある作品。観客にデックをよく混ぜてもらい好きなカードを一枚選んで覚えてもらいます。マジシャンはクラブのJを抜き出し、このカードは探偵だと言います。観客が選んだカードをデックに戻し、探偵カードも離れた位置に差し込みデックをよく混ぜます。デックから一枚ずつカードを表向きに抜き出していき、探偵カードが現れた次のカードが観客が選んだカードなのです。
【Ⅵ】重ね上げ及裏返し
(21)重ね上げ
(22)重ね上げを用いた裏返し
ⅰトップカードを裏返すこと
ⅱ2番目のカードを裏返すこと
ⅲ2番目のカードを裏返すこと
(23)底札を裏返すこと
(24)トップカードを裏返すこと
(25)重ね上げ又は裏返しを用いるカード奇術
[14] 二重の裏返し
観客にデックの半分を持ってもらい、観客とマジシャンそれぞれが持っている山の中から一枚を選んで交換し、互いの山の中に差し込みます。二つの山を重ねて一つのデックに戻し、お互いの選んだカードを言い、デックを広げるとその二枚が表向きになっています。
[15] 陳博士の予言
観客にカードを一枚選んでもらい覚えたらデックに戻してもらいます。デックを混ぜ裏向きで広げると一枚のカードが表向きになっておりなにやら読めない文字が書かれています。マジシャンは「あなたは〇〇のカードを選ぶ」と読み上げ観客に予言が当たっていることを確認します。予言のカードを裏向きになおしてからカットし、再びデックを広げると今度は観客のカードが表向きになっています。
[16] カードの取りかえ
現在でもよく演じられているトランスポジション。デックを観客によく混ぜてもらい、一枚目のカードと二枚目のカードをよく確認してからテーブルに置きますが、いつの間にかこの二枚が入れ替わってしまいます。
[17] 千鳥足のカード
スロップシャッフルを使ったトライアンフ。カードを一枚選んでもらいデックに戻して混ぜますが、適当にひっくり返して表裏ごちゃごちゃに混ぜてしまいます。カードを広げるとすべて裏向きに揃っており、観客のカードだけ表向きになっています。
[18] 浮気なカード
アンビシャスカードの前身的な作品。デックの中ほどに入れた一枚のカードがいつの間にかトップに上がったりボトムに移動したり最後はポケットの中から出てきます。
[19] 不思議なさし込み
デックを観客によく混ぜてもらい、半分くらいに分けたカードの好きな方を選んでもらい、もう片方をマジシャンが持ちます。カードを後ろ手に持ってもらい、好きな一枚を抜き出して覚えたらトップに置いて前に出してもらいます。マジシャンのカードを重ねてデックを元通りにしたあと再び観客に後ろ手に持ってもらい、指示通りに一枚のカードをひっくり返してデックの中ほどに差し込んでもらいます。デックをテーブルに置いて広げると先ほど差し込んだ表向きのカードの隣に観客が選んだカードがあります。
【Ⅶ】綾切り
[20] 客がやって呉れるカード奇術
混ぜたり配ったりなどのカードの操作をすべて観客にやってもらう不可能性の高いカード当て。リフルシャッフルの原理をうまく利用しており現代でも充分通用する作品です。
[21] 赤と黒
有名な「アウト・オブ・ディス・ワールド」の著者のやり方。観客によく混ぜたデックを渡し、一枚ずつ裏向きのまま赤と思ったら赤、黒と思ったら黒の方にカードを仕分けてもらいます。全くの勘で仕分けたはずですが、表を見るとすべてのカードが赤黒正しく仕分けられています。
【Ⅷ】鍵カード
(26)鍵カードの種類
(27)ショウトカード
(28)ショウトカードを用いる奇術
[22] 重いカード
黒くて数の大きいカードを観客に選んでもらい、デックに戻して数回カットすると一番下に沈んできます。黒いインクは赤より重いという演出がこの頃からあったんですね。
[23] カードの当て方
観客が選んだカードをデックに戻し数回カットします。マジシャンは一枚のカードを抜き出し「これがあなたに選ばれたカードのスートを示しています。」と言い、さらにカードを何枚か抜き出し「このカードの数の合計があなたに選ばれたカードの数を示しています。」最後にまた数枚のカードを抜き出し「このカードの数の合計があなたが選んだカードの位置を示しています。」と説明しますが見事に当たっています。
(29)普通カードをキーカードにした奇術
[24] 最後の札
観客にカードを一枚選んでもらい、デックに戻してよく混ぜます。デックを一枚ずつ観客とマジシャンに配り分け、観客に配った山の中に選んだカードがないことを確認してもらいます。再びマジシャンの前にあるカードを配り分け、やはり観客に配った山の中に選んだカードがないことを確認し、最後の一枚になるまで繰り返します。そして残った最後の一枚が観客が選んだカードです。
[25] 不思議な挿入
デックをよく混ぜ観客とマジシャンが半分ずつ持ち、それぞれの山の中から一枚選び表にサインしてから山の中に戻します。それぞれの山を裏向きのままテーブルに広げ、お互いに相手の山の中から一枚選び自分の山の中に差し込みます。カードを一旦揃えてから表向きで広げるとお互いのサインカードが入れ替わっています。
[26] 26枚目のカード
とても不可能性の高いカード当て。セルフワーキングなので技法も使いませんし、すべての操作は観客がおこないます。マジシャンがカードに触るのは最後に観客が選んだカードを抜き出して当てる時だけです。残念なのは作品名が直接的過ぎるということくらいでしょうか…(笑)
【Ⅸ】パス
(30)パス
(31)古典パス
(32)片手パス
(33)反転パス
【Ⅹ】強制法
(34)古典的フォース
(35)切り返しフォース
(36)ハンカチを用いるフォース
(37)幾枚ものカードをフォースする
(38)フォースを用いるカード奇術
[27] 凡て7である
デックから一枚選んでもらい、表を見ずにテーブルに裏向きで置いてから観客の手をそのカードの上に置いてもらいます。好きな数字を決めてもらいその枚数だけ配り山を三つ作ります。選んだカードを表にするとハートの7。三つの山を裏返すとそれらも7のカードです。
[28] 4枚のエース
デックから一枚選んでもらい、表を見ずにテーブルに裏向きで置いてもらいます。マジシャンはデックからカードを二枚選んで表を見せ、このカードの数字とこのカードのスートがあなたが選んだカードを表していますと説明し、テーブルに裏向きに置きます。さらにもう一枚カードを選んでもらいテーブルに裏向きに置いておきます。観客のカードを表返してもらうとダイヤのAで間違っています。マジシャンは困った風に、それではこうしましょうと言ってテーブルに裏向きに置いた三枚のカードを表返すとすべてAになっています。
【ⅩⅠ】カード演技の装飾法
フラリッシュのこと。(45)はこの本を読むまで見たことがないテクニックでしたので興味深かったです。
(39)カードを数える
(40)底札をトップカードの上で見せる
(41)トップカードを片手で見せる
(42)トップカードを見せる
(43)トップカードをひっくりかえす
(44)カードを飛ばす
(45)底札をひっくり返して見せる
(46)1枚のカードをひっくり返す
(47)1枚のカードを鳴らす
(48)カードの桟道
(49)腕にカードの印を現わす
【ⅩⅡ】ファンカード
(50)両手ファン
(51)片手ファン
(52)変形片手ファン
(53)巨人ファン
【ⅩⅢ】カード奇術雑集
この章では作品の解説というよりは演出や手法の一例を提示して、それをヒントに読者に更なるアイデアを出してもらいたいという著者の願いが感じられます。カード奇術の結びにも「読者の研究に期待したい」と述べられています。
[29] カードの感知法
観客にデックをよく混ぜてもらいます。テーブルに置いたデックの中ほどから十数枚くらいをまとめて抜き出し、一番下のカードを見て覚えてもらい、そのままテーブルのカードの上に重ねてもらいます。何度か観客がカットしますがマジシャンは観客が覚えたカードを当ててしまいます。
[30] 3組のカード
デックを観客によく混ぜてもらい、大体同じくらいの三つの山を作ってもらいます。好きな山から一枚選んでもらい覚えたらよく混ぜてもらいます。その山のトップから一枚ずつ表返しながら配っていき覚えたカードが何枚目にあるかを心の中で覚えてもらいます。他の二つの山をよく混ぜ、選んだ山を挟むように重ね、数回カットしてもらったところでマジシャンはデックを受け取り、覚えた枚数目を聞いてから選ばれたカードを当ててみせます。
[31] 4枚のエースの中に
観客に一枚のカードを選んで覚えてもらい、デックに戻してからよく混ぜます。デックから四枚のAを抜き出し、表向きのデックの真ん中に裏向きで挟みます。デックを観客に渡して広げさせると四枚のAの真ん中に観客が選んだカードが挟まっています。
[32] 消えて行くカード
五枚のカードの中から心に思った一枚を当てるピストンカード。デックに押し込むたびにカードが絞られていく演出が面白い作品です。
[33] 自然に出来るカード奇術
正直に言うと作品名とはまったく逆の印象で、とても不自然に感じられたのは私だけでしょうか?ただこの章のテーマを考えると、著者はこれも何かのヒントになるかもしれないという思いで先入観を捨てて紹介したのかもしれません。
[34] 4枚のエース
穴の開いた封筒を使った見た目がちょっと変わってて面白いフォアエースアセンブリーです。
[35] うしろ手のカード
どちらかというとステージ向けのカード当て作品です。二人の観客に手伝ってもらいます。一人にはカードを選んでもらい、もう一人にはデックを後ろ手に持ってもらいトップカードをひっくり返してデックの中ほどに差し込んでもらいます。デックを広げると二人目の観客が差し込んだ表向きのカードの隣が選ばれたカードなのです。
[36] 公平なカード
目隠しを使ったカード当て。観客が覚えた一枚のカードをデックに混ぜて観客に持ってもらい、マジシャンは目隠しをして手の上に一枚ずつカードを裏向きで置いてもらいます。マジシャンは途中でストップをかけてからカードを言い当て、そのとき観客が手に持っているのが選ばれたカードなのです。
[37] 移動したカードの数
十三枚のカードを使用したセルフワーキング作品。観客は十三枚のパケットを持ち、マジシャンに見えないよう好きな枚数だけ一枚ずつボトムからトップへ移動させますが、その枚数が最初から示していた封筒の中に予言されています。
第2編 紐の奇術
[1] 紐の4つ切り
二つ切りは知っていてもこれを知っている人は少ないのではないかと思いましたが、考えてみるとロープ切りの演技自体を最近はほとんど見なくなりましたね。たしかに演技するたびにロープを用意しなくてはならずコストもかかるのでレパートリーに入れにくいのは理解できなくもないのですが、復活現象はインパクトが大きく、こちらが思っていた以上の反応を観客から得られますので、もし演じたことがないのなら一度は演じてみることをオススメします。特にこの著者の方法は間違えにくいところが利点で、紐をバラバラに切ったという錯覚も強く、なかなかの掘り出し物だと思います。
[2] 紙に包んだ紐
紐の真ん中を紙で折り包み、ハサミで真っ二つに切りますが紙だけが切れて中の紐は無事です。
[3] 動く結び目
紐の両端を結び輪を作ります。輪の結び目近くをハサミで切ると紐の片端に結び目ができている状態になります。この結び目が紐の中央、そして反対側へと移動してしまいます。
[4] 不可能な結び目
紐の両端を両手で持ったまま紐の中央に結び目を作るという、バーベットでもよく使われるパズル的な手法です。
[5] 簡単な紐切り
最もオーソドックスなタイプの二つ切りです。
[6] 二階造りの輪
著者(柴田直光)考案。紐を一回結んで輪を作り、その上にもう一回結んで二階建ての輪を作ります。この縦に並んでいる二つの輪がいつの間にか横並びになっています。
[7] 手首から生れる輪
紐の両端で両手首をしっかり縛ってもらいます。両手にハンカチをかけてもらい、しばらくしてからハンカチを取ってもらうと両手の間の紐に結び目がひとつできています。
[8] 結び玉の行列
紐を手に巻き付けていき、サッと振りほどくといくつもの結び目が並んで出来ています。紐遊びとして昔からあったもので真偽は定かではないものの結び昆布職人がルーツという説がとても興味深く想像力を掻き立てられます。ちなみにこのいくつもの結び目が一瞬ですべて解ける方法は著者の考案だそうです。
[9] 天狗通
紐の両端を結んで輪にし、穴の開いた茶托(コースターのこと。輪っか状であれば何でもよい。)を通してから両手首にかけます。マジシャンは手首から紐を外すことなく茶托を抜いてみせます。
[10] 輪を通す
前述の天狗通と逆の現象です。こちらの方が簡単。
[11] 綾かけ抜きとり
縄抜けの一種。二本のロープを交差させてから二人の両手首をそれぞれの端で結びます。手首の紐を解かない限り二人は離れられそうにありませんが、マジシャンは手首が結ばれたままで交差する紐を外してみせます。
[12] 手首のハンカチ
これも縄抜けの一種。両手を合わせハンカチで両手首を縛ります。そこに紐を通して両端を持ってもらいますがマジシャンは両手首を縛られたまま紐を抜いてみせます。
[13] 鉛筆を抜く
鉛筆のお尻に鉛筆よりも短い紐が輪になって通っており、それが観客の上着のボタンホールに付けられ簡単には外れません。有名なパズルですが肝心の外す方法が解説されておらず、「諸君は是非試みられるがよい。」と現代から見てもかなり斬新な説明(?)となっています(笑)
[14] 鋏抜き
紐とハサミを使ったパズル。前述の鉛筆パズルと基本的な原理は同じです。
[15] 結んで解く
紐をいくつも結び何重にも絡ませますが両端を引っ張るとするりと解けます。
[16] 蝶結び
蝶結びの結び解け。
[17] 紐を引き切る
観客が引き切れない(または引き切るのが大変な)紐をマジシャンは簡単に引き切ってみせるという、奇術というよりは軽いビックリ人間ショー的なライフハック的な方法です。
[18] 指抜き
私はついシンブルを思い浮かべてしまいますが、これは指に絡めた紐がするりと抜けてしまいます。
[19] 人の指を抜く
やや物騒な作品名ですが、他人の指に絡めた紐がすり抜ける奇術ですのでご安心ください。
[20] 相思連筆
現在のチャイニーズ・ステッキ。元は中国の奇術書『中外戯法』の中に解説されている原理で、雄と雌と書かれている二本の竹の筆に通されている紐があり、片方の紐を引くともう一方の筆の紐も引っ張られて動くというものです。
[21] 相思彩線
これはミカメクラフトのMCポンポンの原理の元だと言えば分かりやすい人も多いでしょう。竹筒に十箇所穴が開いており、すべて色違いの紐が通っていますが、どの紐を引っ張っても他の紐が連動して動く不思議な玩具として『中外戯法』に紹介されています。
第3編 ボールの奇術
ここでのボールとは主にステージで用いるビリヤードボール(シカゴの四つ玉)のことで、数ある技法の中から基本的なものを解説しています。
[1] ボールを手に隠す
ボールをパームする二通りの方法。
[2] 落しボール
ボールのフェイクパス。重力を上手く利用しています。
[3] 両手を改める
ボールを隠し持ったまま両手を改める方法。
[4] ボールが増える
一個のボールがいつの間にか二個に増えてしまいます。
[5] ハンカチからボールを出す
ハンカチを上手く利用した落しボール。綺麗に決まるととても不思議です。
[6] 二色ボール
白いボールが赤に変わり、さらにまた白いボールが出現します。
[7] 三色ボール
何故かこれだけクロースアップ的な作品です。底のない紙箱が三つ並んでおり、その箱の前に白赤青の三色のボールが各三個ずつ置かれています。マジシャンはボールを一個ずつそのボールの後ろにある箱の中へ入れていきます。すべてのボールが箱の中に入れられ、それぞれの箱の中に同じ色のボールが三個ずつ入っているはずなのに、箱を持ち上げてみるとどの箱にも白赤青と三個ずつの組でボールが入っているのです。
第4編 銀貨の奇術
当時はやはり海外のコインがなかなか手に入れられなかったようで、筆者も「昔の五十銭銀貨より一寸大きいのが使いよいが、今のところ手に入らない。」とぼやいています。
[1] 銀貨のパーム
パーム各種と現代から見るとちょっと変わったフェイクパスをいくつか解説しています。
[2] 銀貨の消失
正確には消失ではなく手の甲から手の平へのコインの貫通です。
[3] 手の裏表を見せる
バックパームとその移行方法です。
[4] 銀貨を1枚宛出す
空中から銀貨が一枚ずつ計五枚出現します。
[5] 銀貨を投げる
ちょっと変わったハンピンチェン・ムーブ。銀貨を両手に二枚ずつ握り両腕を交差させた状態で両手の銀貨を片手ずつ示し、その後両手を開くと片手の二枚がなくなり反対の手に四枚の銀貨が集まっています。
[6] 銀貨の移動
銀貨六枚のコインズ・アクロス。エキストラコインを使った最もシンプルな手順です。
[7] 紙に包む銀貨
銀貨を紙に包んで消してしまう方法です。
[8] 輪の中の銀貨
二つの輪っかと紙のフタを用意し、一つの輪っかの上に紙のフタを被せて銀貨の上に重ねます。フタを取ると銀貨はそこにあります。次に二つの輪っかを重ねてその上にフタをして銀貨の上に重ねます。フタを取ると銀貨は消えています。
[9] 銀貨の消失
これは現代ではスライトのみで演じる解説が多いのですが、ここではギミックを使って銀貨を完全消失させています。銀貨をズボンに膝のところに擦り付け、ズボンの布を折り返して銀貨を包み隠します。しばらく押さえた後、膝と両手を見せますが銀貨はどこにもありません。
第5編 ダイスの奇術
[1] 変るダイスの目
少し大振りのダイスを持って1の面を見せます。通常ダイスの反対の目の和は7ですが、1をひっくり返して裏面を見せると4になっています。さらに4の裏面を見てみると今度は6になっています。
[2] 3つのダイス
前述の「変わるダイスの目」のダイス三個バージョン。著者考案。ダイスを三個振り5、1、2の目が出たとします。すると裏面は2、6、5になる筈ですが三個をまとめて持ちひっくり返すと同じ5、1、2になっています。
[3] 数字のダイス
ダイスを使った速算術。三桁の数字が各面に書かれているダイスを三個取り出し、観客に三個同時に振ってもらいます。するとマジシャンは出た三つの数字の合計を一瞬で計算してしまいます。それだけではなく裏面の合計も言い当てることができます。
第6編 数に関する奇術
[1] 偉大なる記憶力
マジシャンは数字の表を取り出し、ここに書かれている六桁の数字をすべて記憶していると言い、観客が指定したマスに書いてある六桁の数字をすらすらと答えてみせます。
[2] 37ゲーム
1~5のカードをテーブルに並べ目印となる駒をひとつ置いてゲームを始めます。ゲームは二人でおこない、まず先手が好きなカードの上に駒を置いてその数(例えば2)を言います。次に後手が現在駒が置かれているカード以外のカード(例えば3)の上に駒を移動させ、そのカードの数字を足した数字(つまり5)を言います。これを交互に繰り返していき、37以上の数を言ってしまった方が負けとなりますがマジシャンは必ず勝ってしまいます。
[3] 22ゲーム
前述の「37ゲーム」の必勝法原理をヒントに著者が考案した作品。ゲームスタイルは双六で1~22のマス目コースを二人のプレイヤーがダイスを使って交互に駒を進め、先に22のマスにぴったり止まれば勝ち。あるいは相手が22のマスを越えても勝ちです。またダイスは振るのではなく、先手が自由に置いてからは後手、先手と前後左右に一回分転がすだけというルールです。これもマジシャンが必ず勝ってしまいます。
[4] 消える短冊
短冊が十三本描かれている白い紙を四分割して並べ替えると不思議なことに短冊が十四本になり、さらに並べ替えると今度は十二本になっています。このパズルはその後発展して短冊が子供や動物のイラストに変わり、さらに不思議さと面白さが増しました。
[5] 彼女はつかまったか
紙に十五個のマスとそれらを複雑に繋ぐルートがあり、男の駒が女の駒を追いかけて捕まえられるか?という鬼ごっこゲーム的なパズル。もちろん必勝法があります。
[6] 16枚のカード
「22ゲーム」の一種です。デックから1~4の全スートのカードを合計十六枚抜き出して、表向きで4×4マスに並べます。二人が互いに好きなカードを一枚ずつ裏返し、その数をどんどん足していきます。先にぴったり22になれば勝ち。あるいは相手が22を越えても勝ちです。
[7] カードの山
観客はデックから適当に三枚を抜き出しテーブルに表向きに並べます。スートは関係なく、カードの数字から数え始めて15になるように裏向きにカードを重ねてもらいます。つまり表向きの7のカードの上に八枚の裏向きカードを重ねます。(絵札はすべて10と数えます。)表向きの三枚とも同じように裏向きカードを重ねてから表向きのカードが見えないようによく揃えてもらいます。後ろ向きになっていたマジシャンは前に向き直り、残りのカードを受け取って三枚の表向きカードの合計を当ててしまいます。
[8] カードの算術
観客にカードを一枚覚えてもらい、その数とスートを使って指示通りの計算をしてもらいます。マジシャンはその答えを聞いて観客が覚えたカードを当ててみせます。
[9] みやまくずし
碁石やマッチ棒などを使って適当に三つの山を作り、二人が交互に好きな数の石を取っていきます。ただし一度に取れるのはひとつの山からだけで、ひと山全部取るのは問題ありません。最終的に最後の一個を取らされた方が負けというゲームですが、著者の考案した必勝法が詳しく解説されています。
第7編 食卓の話題
[1] カードをナイフで当てる
デックの好きなところに食事用ナイフを差し込んでもらい、そこのカードが何であるかを見ずに当ててしまいます。
[2] 結んだ髪の毛をとく
長めの髪の毛を一本借りて切れない程度にしっかりと一回結びます。これを解いてみせるのですが、方法が地味ですし(へえぇ~とは思いますが…)五分ほどかかるようなので、あまり人前で見せる気が起きません。一人でこっそり試してみたいような気はしますが…(笑)
[3] 手の甲へ針をさす
ちょっとした危険術です。手の甲から針を突き刺し掌側へ貫通させます。マジシャンは痛くないので大丈夫ですが、ちょっと現代では思いつかない解決法です。
[4] ハンカチと銀貨
ハンカチに包んだ銀貨が消えてなくなります。
[5] 掌の中で消える銀貨
コインを掌にのせて握り、そのまま怪しい動きもなくパッと手を開くと銀貨が消えています。このコインの消し方は、この本でしか見たことがありません。ユニークな方法ですが、ダイムやペニーなど小さめのコインでなければ難しいと思います。
[6] 紙切り
幅十センチほどの長い紙を筒状にグルグルと巻いてハサミで切れ目を入れてから筒の中に指を入れて引き出すとヤシの木やハシゴなどの面白い形が出来上がります。
[7] マッチを折る
ハンカチの中でマッチ棒をポキポキと折りますがハンカチを開くとマッチ棒は元通り復活しています。
[8] 片手でハンカチを結ぶ
主にステージでよく使われる技法です。
[9] カードを裏から読む
ファンの状態で使えるピークの一方法です。
[10] マッチをつかむ
マッチ棒を使ったバーベットのひとつ。マッチ棒二本をそれぞれ一本ずつ両手の親指の付け根に挟んでから人差し指と親指でマッチ棒の両端を掴む問題ですが、マッチ棒が交差せずに両手が離せないといけません。やってみると分かりますが知らないと結構難しいです。
[11] 掌にくっつくカード
文字通り何枚ものカードが掌にくっつきますが、これも[3]と同じく現代ではちょっと思いつかない解決法です。
[12] 指先に残る銀貨
これもバーベットの作品として見たことがあります。人差し指の上に名刺を置き、その上に銀貨を置いてバランスを取ります。触れてよいのは反対の人差し指一本だけで銀貨を落とさずに名刺を取るというもの。
[13] アフガニスタンの輪
メビウスの輪です。この名称は初めて見ました。他でもこう呼ばれている本や地域はあるのでしょうか?
[14] スケルトン・ボール
工作の方法。切れ込みを入れた円形の紙を何枚も組み合わせてボール状にしていきます。
[15] マッチを消す
正しくはマッチの火を消す方法。何を当たり前なことをと思われるかもしれませんが、火のついたマッチとは全く違う方向に息を吹いているのにマッチの火が消えます。
[16] 生指の箱
いたずら奇術。小箱のフタを開けると指が入っており見ていると突然動き始めます。
[17] 指で当てる
碁石を十個用意して観客に渡し、マジシャンは後ろを向きます。観客に一個ずつの組と二個ずつの組に配り分けてもらう時に、その都度ハイとだけ声を出してもらいます。マジシャンは観客の声だけを聞いて一個ずつと二個ずつの石の数がいくつかを当ててみせます。
[18] 盆字
奇術というよりは隠し芸的な技。お盆を伏せて置き、観客に筆をお盆に垂直に立つように持ってもらいます。マジシャンはお盆を動かし、観客から見て読めるように文字を書いてみせます。
[19] ハンカチを結んで解く
最も有名なシルクの結び解けです。
[20] 智慧の板の不思議
面積の変わらないパズル。正方形の板を切り分けたパズルで人のカタチを作ります。最初は足があったのに、二回目は足がありません。パーツはすべて使っているのに不思議です。
[21] 暗号の製作
簡単な暗号製作器の紹介。
[22] 掌の上で起上がるマッチ
アクロバティック・マッチボックス。掌の上でマッチ箱が勝手に動き、立ち上がり、中箱までせり出てきます。
第8編 当てもの
それぞれお菓子屋のメニュー、数字、漢字をテーマにした当てものでどれも事前に用意している紙を使います。
[1] お菓子屋
[2] 数字の窓
[3] 蘇武牧羊