おしゃべりなジョーカー
原案 ”魔女のささやき”(野島伸幸)
500円(税込540円)
【現象】
第一段:観客に一枚のカードを自由に選んでもらい、デックに戻して混ぜます。選んだカードをジョーカーに教えてもらうと言い、デックから抜き出したジョーカーを耳元に近づけてしばらくやり取りをした後にズバリ当ててしまいます。
第二段:ジョーカーでおまじないをかけるとデックの中から観客の選んだカードが消えてしまいます。
第三段:観客に好きな数字を尋ねてからデックを広げると、選んだカードだけが裏向きになって観客が言った枚数目から現れます。
観客が選んだカードを特定のカードがささやいて教えてくれるウィスパリング・カード(ささやくカード)のテーマは1933年に発表されたハリー・ケラー(Harry Keller)の”ウィスパリング・クイーン”が今のところ最も古いようです。
ここからラドソン・バトラー(Ladson Butler)の複数枚のカードを次々と言い当てる”ウィスパリング・カード”や、ポール・カリー(Paul Curry)の演者がデックを一切見ないだけでなく観客に混ぜさせてしまうという不可能性の高い”ウィスパリング・ジョーカー”など多くの作品が生まれました。
マジシャン以外の存在が不思議な現象を起こし、時にはマジシャンすらも翻弄するというテーマは昔から私の大好物でして、もちろんこのウィスパリング・カードも例外ではありません。
演者とカードと観客の奇妙なやり取りは不思議で、それでいて楽しく、魅力的な時間だと思います。
【長所】
難易度低め:ルイさんの実演動画では高度な技法というか少し難しめな技術を「なにか?」みたいな感じでしれっと演じてたりしてますが、その辺りはかなり自分のレベルに合わせて調整することが可能です。自分好みの微調整がしやすいのはシンプルな手順のメリットだと思います。実際、手や頭の仕事負担は少なめでリラックスして演出に集中することができます。上級者が普段使いできるだけじゃなく、初級者から中級者にレベルアップしつつある方が覚えるのに丁度いい作品じゃないでしょうか。
演技時間の調整がしやすい:さらっと演じると3分かからないくらいの手順ですが、ジョーカーとのやり取りなど演出次第で軽く5分以上はショーを膨らませることが可能です。これもシンプルな手順ゆえのメリットですね。各自お好みの演技時間に調整しやすい現場向けのルーティンです。
安くて手軽:これは商品の値段だけではなく、レギュラーデックが一組あればいつでも演じられるという意味でもあります。準備は必要ですが簡単なセットですので慣れれば10秒もかかりません。他のカードマジックを演じ終わってから、わずかなオフビートの間にすぐ準備することが可能ですのでとても使い勝手が良いと思います。
【短所】
ある程度の演技力が必要:あえて短所というか難しさを挙げるなら、カードに魂を吹き込めるほどの演技力が必要という点でしょうか。不思議さは手順をきちんとこなせば担保されますが、この作品の醍醐味であるカードとのやり取りという面白さは、やはりある程度の演技力あってこそのものだと思います。演者が恥ずかしがって中途半端な演技をしていては見ている観客の方が余計恥ずかしくなって白けてしまいます。プロの腹話術の演技を見て勉強したり、台本を作って練習した方が良いかもしれません。そう考えるとマジックの練習よりも寧ろこっちの方が大変じゃねーか…と思います(笑)