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ASIS -A Study In Summer-(ア・スタディ・イン・サマー)

二川滋夫 ゆうゆう izumi 富山達也 トウフ きょうじゅ 園内五果 Bee男爵 ヤマギシルイ

編集出版 サークル『教授の戯言』

初版 2017/08/26

定価 2,100円(80ページ)

 ネット上に数多くあるマジック商品の現象説明文のみから、それを達成しうる手順を持ち寄り、なんと本という形にまでしてしまった悪ふざけにも程があるマジック同人誌。しかし読めば分かりますが中身はかなり本気の大真面目ですし、該当商品を所持している人に原稿のチェックを依頼し、偶然にも商品の手法と一致した場合は掲載を見送るという徹底ぶりには好感が持てます。寄稿者たちの「なつやすみのじゆうけんきゅう」を読むことで創作に関する十人十色(あ、10人じゃなかった)のノウハウも知ることができますので創作好きには楽しめる一冊だと思います。

「Counter Punch」っぽい 二川滋夫

 いきなり大御所です。ほぼ条件を満たした上でキッチリ別解答に仕上げていて、やはり流石だなぁと思います。ただ本家の実際の演技を知らないのでアレなのですが、第二段で「カットされたところのカードを見る」という部分、私は「残されたデック下半分のトップカード一枚のみを見る」と解釈しました。記憶術の演出なので枚数を当てるために見るのは一枚で充分なはずです。あまり複数枚を広げて見ていると、残り枚数を素早く数えたのだと誤解されそうですし。第三段の解決法、私も大好きな原理です。ただし、この方法だと第一段から三段まで通して演じることができません。ご本人も「途中から考え付いたもので前後の食い違いがあるので、また暇なときに全体を通した方法を書き出してみたい」と仰っているので、果たして二川さんに暇なときってあるのか?という疑問はとりあえず置いておいて楽しみに待っていようと思います。

「OMEN」っぽい 二川滋夫

 繊細さと大胆さを併せ持った見事な解決法だと思います。重ね方はマジシャンと観客が四つずつ受け持つなどの工夫次第で簡単にクリアできると思いますし、最後は公明正大に配ってもらって示せるというのも素晴らしいです。そしてエンドクリーン。私は原案を知りませんが、ひょっとしたらこちらの方が手順的に複雑さが少なく演じやすい方法なんじゃ?とさえ思える完成度です。今後、好んで演じ続けてしまいそうです。でも作品名を聞かれたら「オーメンっぽい」って言わなきゃいけないんですかね?やっぱり。

「Vivaldi」っぽい ゆうゆう

 たしかに条件はキッチリ満たしていますが…普通のマニアなら思いついたとしても「さすがにコレは…(◎_◎;)」と思いなおし、すぐにそれを振り払うものですが、敢えてそこを押し通すところが流石です(笑)

ヤマギシルイさんが予言の理解に若干の時間を必要とする(パッと見て分かりにくい)ので予言→選ばれたカードの順番で公開した方が効果的という意見をされていて非常に同感でしたが、あくまでも既に決められている現象を達成しなくてはいけないというルールなので、まあ仕方ないですよね。ただ、このままでは手順の軽さに比べて予言の示し方が大仰過ぎる(妻にも指摘されました)ので、ちょこっと変えてみました。この予言の示し方のメリットはアウトをダブルに出来ることだなと思ったので、選択カードも二択にして少し不思議要素を高めてみたところ、妻からやっとOKが出ました(汗)

「Daydream」っぽい ゆうゆう

 なんとズバリ正解!おめでとうございます!といいますか「正解だから解説ナシ」ということまでページ数割いてちゃんと載るんですね、この本(笑)10年くらい前、TVでムッシュ・ピエールさんがコレを演じているのを見て良い作品だなぁと思い、私も方法を考えたことがありました(私も多分正解です。いや決して張り合っているわけではありませんよ。)ただ欲を言えば、正解だったら正解で「違う方法を考えてもらいま賞」とかあったら良かったのにと思いました。解説なしって寂しいです、やっぱり。それはさておき補足の「柔らかいフォース」というスイーツのような表現はとてもとても素晴らしいと思います。

「Gemini Fates」っぽい ゆうゆう

 技法を使わないという条件まで徹底しての解答、お見事です。手間を考えるとモンキーインザミドルのような解決法でも良さそうですね。審判長のこっぺさんも85%以上の一致と認めており、デイドリームの正解も合わせて考えると、ゆうゆうさんは初心者を遥かに上回る実力の持ち主であることが証明されました。補足で手抜き事実が判明したとはいえスゴイです(笑)

「Palette」っぽい izumi

 これまた正解!しかもかなりガチのようです。なので解説はナシですが、その代わり自分用の別作品「Catalog」の一部解説があるとのことなので嬉しい限りです(そう、こういうのですよ。ゆうゆうさん(笑))

Catalog izumi

 あらかじめ用意するカタログの演出も良いですが、布袋に入れたトランプを出すところがなんだかワクワクしますね。道具の準備がちょっと大変なのですぐに実演というわけにはいきませんが、材料が揃ったら演じてみたいです。原案のリスクを減らしセリフの細かい部分で現象効果をさらに高めている完成度の高い作品だと思います。

「Masterpiece」っぽい 富山達也

 フォースタイプとスイッチタイプの二種類を解説。好みが分かれるところだと思いますが、私はクラシックフォースでフェアさに重点を置いて演じてみました。仮に1~2回失敗しても例示ということでやり直せますし、最後にすべての道具を検めさせられるのは強みだと思います。あるいはダニ・ダオルティスの”Math Magic”のようにワイワイ演じても楽しいかもしれません。プロット自体が魅力的なので演者の好みやセンスが色濃く表れる作品だと思います。

「Pairs」っぽい 園内五果

 とても不思議に見えます。表向きと裏向きのパケットで操作するのが良いですね。マジシャンが最初におこなう操作の理由付けも自然だと思いますし怪しいところが見えません。完璧じゃないですか?

「Love Bites」っぽい izumi

 創作条件に高度な技法は使わないってあったのに、なんかやたら難しいぞ!と思ったらizumiさん左利きだったんですね。ナルホド書いてある通りのハンドリングだと難しい訳だ…(笑)とにかく準備なしのレギュラーデックで演じられるところが凄いと思います。そうすると破れている二枚を別々に示せる本家の解決方法も気になるところなので自分でも考えてみたいと思います。

「Dual」っぽい トウフ

 ACAANにおいて王道と言ってもよい解決法です。二人分のカードということを上手く利用してデックに対する演者の怪しい操作を一切無くしているところが賢いなぁと思いました。最後の解決法は、私だったらカード二枚の接触時間を限りなく短くしたいので、出自は度忘れしましたがメンタルマジックでよく使われるあの技法を使って演じます。

「T2」っぽい きょうじゅ

 ホント便利ですよねぇ、あのデック。あ、ちゃんともうひとつの案もあったんですね…と思ったら案2の方がもっと凄かったです。なんというか祭りの出店でやってる射的ゲームにマシンガン持ってくるみたいな(笑)でも現象説明文をそのまま素直に解釈した場合、とても解決できそうにないほど不可能性が高いので、そういう意味では現実的な解決法だと思いました。そして最後のこっぺさんのコメントを読んで本家の解決法がますます気になってしまいました。

「Lazy Prediction」っぽい Bee男爵

 またまた超難解プロットですが見事に解決しています。それも2パターン。個人的には一つ目の方がスッキリした手順なので演じる上では好みですが、二つ目も売りネタになってもおかしくないほどの完成度で、本当に良い仕事してるなぁと感心しました。

MMMMMM ヤマギシルイ

 なんだこの草はえたみたいなタイトルは?と思いましたが、準備のところを読んで納得。事前にちょっとだけ練習というか感覚の訓練が必要ですが充分実演可能で、セリフも含めて非常に上手い解決法だと思います。ただ、この本の主旨からやや外れているような…そんな疑問を完全に無視して食品会社の回し者ヤマギシルイさんの改案祭りがこの後も続きます(笑)

Diffused Numero ヤマギシルイ

 元の現象説明では「お客様」となっているのに解説では「ギャル」限定になってて笑いました。補足にも書かれていますが、このプロットってそもそも演じにくいんですよねぇ…でも、この手法は他のプロットにいくらでも応用が利くので凄く便利だと思います。

Self-Counterpunch ヤマギシルイ

 これがプロか!と唸らせられた改案手順です。特に第三段のシャッフル解決法はとても参考になりました。プロット別案もピッタリのアイデアでこれは演じてみたくなります。

Imagination Double Cross ヤマギシルイ

 これはスゴイです。改案?これが本家じゃないなら間違いなくこっちの方が優秀だろうと思うくらい非の打ちどころがないです。ただ、とても素晴らしいとは思うのですが仕事中に安眠しちゃいけないと思います。

Silent Daydream ヤマギシルイ

 一組のデックのみでおこなう非常に挑戦的な解決法です。タイトルのヒントもあったので使用したテクニックが何かは読み始めてすぐに分かりましたが、脳内処理的な意味で難易度かなり高めの手順ですね。スムーズに演じるにはかなりの訓練を必要とします。ただルイさんのオリジナル・アイデアで無理なく絞り込みやすくはなっているので、本人が仰る通りこの手の技術のトレーニング演目としては充分価値があると思います。

Daydream Everytime ヤマギシルイ

 またまた”Daydream”です。今度は原案と同じく二組のデックを使いますが、カードを選ばせるデックはレギュラーというもの。これは前述のサイレント・バージョンよりも演じやすいです。ブラザー・ジョン・ハーマンの手法は観客にとてもフェアな印象を与えるので私も大好きです。しかし補足の途中から長々と私は一体何を読まされているのでしょう?今思えばこれは試練だったのでしょう。試練を乗り越えた人にはご褒美がありますので、とても辛いでしょうが歯を食いしばって読んでください。皆さんの健闘をお祈り致します。

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